外脛骨とは、足関節内果(内くるぶし)前下方にある舟状骨内側にできる過剰骨です。
足部にできる過剰骨では最も高頻度に認め、5~14%に存在し、80~90%は両側性です。
外脛骨自体は、隆起しているだけで、特に症状がないことがよくありますが、外脛骨に痛み、圧痛、腫れなどの症状が出ている病態が有痛性外脛骨です。
スポーツ活動を盛んに行う10~15歳頃に発症することが多く、女性に多い傾向です。
走る、急に止まる、跳躍するような競技(陸上、サッカー、ラグビー、バスケットボール、バレーボールなど)で多くみられます。
原因
舟状骨の内側後方には、後脛骨筋腱(ふくらはぎにある筋肉)が付着し、足部の内側縦アーチ(土踏まず)の保持、足部の内転に重要な役割を果たしています。
過度の運動を繰り返すことで下腿の筋肉が疲労し、柔軟性が低下すると後脛骨筋が引っ張られて、外脛骨部に牽引力がかかり、同部位に痛み、炎症(発赤、腫れ)などが起こります。
扁平足(足の裏の土踏まずがない状態)、回内足(かかとが内側に向いている状態)であったり、外脛骨が大きく突出しているタイプでは、外脛骨に負担がかかりやすくなります。
よって、長時間の歩行、立ち仕事などの軽い運動でも症状が出ることがあります。
運動を繰り返しているうちに徐々に症状が強くなることが多いですが、捻挫、打撲などの外傷、靴による圧迫などがきっかけとなって発症することもあります。
症状
舟状骨の内側後方部に骨性の隆起を認めます。
圧迫による痛みはありますが、発赤、腫脹などの炎症症状はそれほど目立ちません。
爪先立ちや、長時間の歩行、立位での作業によって痛みが出ます。
セルフチェック(よくある自覚症状)
- サッカーでサイドキックした時に外脛骨部が痛む
- スキー、スノーボード、スケート、バスケットボールシューズなど、特定のブーツ、シューズを履いた時に隆起部が接触することで痛む
- 靴底(ソール)の減り方に特徴がある(踵部内側が極端に減りやすい)
診断
診察
外脛骨の確認、腫れ、発赤、圧痛をチェックします。
同時に扁平足、回内足、下腿筋の柔軟性なども確認します。
レントゲン
レントゲンにて舟状骨の変形を確認します。
レントゲン分類(Veitch分類)は、下記の通りです。
- typeⅠ:外脛骨が後脛骨筋腱内に存在し、舟状骨とは分離している
- typeⅡ:外脛骨が舟状骨と線維性に結合している
- typeⅢ:外脛骨が舟状骨に連続し、一部になっている
このうち、typeⅡが圧倒的に痛みの原因になりやすいです。
エコー、MRI
軟骨や筋肉・靭帯を評価するために行う場合もあります。
有痛性外脛骨になりやすい人
- 女性(扁平足、外反母趾なども含め、女性ホルモンの変動と関係している可能性があります。)
- 扁平足、回内足
- スキー、スケート、バレエ、新体操など、キツめの靴を履いてプレーする競技者
- 陸上、サッカー、バスケットなど、走る、跳ぶ、急に止まるなどの動きが多い競技者
- 体幹の筋力低下、下腿筋の慢性的な疲労、柔軟性の低下がある人
治療
保存的治療
症状を繰り返すものであっても、15~17歳の骨成長が停止する頃には自然治癒することが多いため、基本的には保存的治療を行います。
症状の改善には個人差があり、3~4ヶ月程度かかるケースが多い印象ですが、年単位で症状が残存するケースもあります。
具体的には、下記のような治療を行っていきます。
- 局所の安静
アイシング、除圧パッド、外固定、テーピングを行います。 - 足底板の使用
扁平足、回内足の場合、アーチサポートを使用します。 - 自分に合った靴の選択
外脛骨部を圧迫するような靴を避け、幅広い靴を選択するようにします。 - 投薬(痛み止め、外用薬など)
- 注射(ステロイド)
- リハビリテーション
アーチ保持のため、足部内在筋訓練、足趾運動を行います。 - ストレッチ・マッサージ
足趾運動を行うことで、後脛骨筋、腓腹筋、腓骨筋などにアプローチします。 - 体外衝撃波による治療
外科治療
- 動脈注入療法(運動器カテーテル治療)
痛みの原因となる異常血管にアプローチします。 - 手術
手術には、骨接合術、骨片摘出術、経皮的骨穿孔術(ドリリング)などがあります。
再発を繰り返す症例、早期復帰を望む症例に対して稀ですが行われます。
予防
外脛骨自体を予防することは困難です。
症状が出る原因を理解し、再発予防をしましょう。
再発予防に大切なこと
- スポーツの前後にストレッチを行う(後脛骨筋、腓骨筋、腓腹筋)
- スポーツ後にアイシングを行う
- 適切なシューズの選択
- 足部アーチの保持(足趾の運動、必要であれば足底板を使用しましょう。)
また、扁平足を伴った有痛性外脛骨症状を放置すると、歩行様式、下肢の荷重様式に影響し、将来的に膝関節、股関節にも影響が出たりすることもあります。
心配であれば整形外科医師に相談しましょう。
当院でできること
- 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
- 投薬、注射、補装具を使用した保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション
- 手術術後の回復リハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
当院でできないこと
当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。
必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
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