四十肩、五十肩は、肩関節周囲の炎症により生じる疾患です。
江戸時代にはすでに、「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛むことあり、ほど過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう。また長命病ともいう」と報告され、当時から原因がはっきりせず、経過観察で症状は緩和していたようです。
江戸時代の平均寿命は現在よりもかなり短かったので長命病と呼ばれていたようですね。
四十代、五十代に多いのは確かですが、若年であっても、高齢であっても同様の症状が起こることはよくあります。
一般的な認知度の高い病態のため、整形外科などの医療機関に受診することなく経過観察している患者さんも多い印象です。
受診時期が遅延し、肩関節の拘縮が完成(高度な可動域制限)していることもよく経験します。
疼痛が強い場合、肩の動きが悪い場合には早期に整形外科を受診することをお勧めします。
症状
明らかな外傷歴がない(転倒、運動など)のに痛む
思い当たることはないのに急に痛む。
肩から上腕にかけての痛み、痛みからの可動域制限
痛みで肩、上肢を動かせない。
上肢を前方、側方に上げる動作、帯を締める動作、ズボンを上げる動作などを行う際に肩周囲にズキンとした疼痛、脱力感、可動域の制限をきたすことが多いです。
安静時、特定動作での疼痛
横になるだけで痛む。
就寝時、横になっただけで疼痛が出る(夜間痛)、横向きで肩が身体の下側になると痛みが出る、寝返りで目が覚める、なども特徴的といえる症状です。
ただし、肩や上腕の痛みというのは、肩関節周囲炎以外でも頚椎疾患など、様々な疾病でも生じる可能性があります。
注目すべきなのは、肩関節に運動時の疼痛、可動域の制限があるかないかという点です。
原因
- なぜ、肩なのか?
- なぜ、四十代、五十代に症状が起こりやすいのか?
- なぜ、自然経過で症状が軽快することが多いのか?
など 肩関節周囲炎の原因・メカニズムに関しては明らかになっていないことが多いです。
予想される原因
肩関節周囲筋の筋緊張が不適切
三角筋、広背筋、僧帽筋、腱板(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)などの肩関節、肩甲骨にかかわる筋肉の緊張が低下していたり、逆に過剰な状態だと、肩関節、肩峰下部にストレスがかかり疼痛の原因となります。
加齢
加齢によって、筋肉や関節の柔軟性が低下していることが原因の場合があります。
血液の循環状態の悪化
肩をほとんど動かさなかったなども原因になることもあります。
肩関節局所の冷え、関節内圧の変化
入眠時に肩周囲が冷えてしまったり、仰臥位になることで上肢による下方への牽引がなくなることで肩峰下の圧が高まったりすることが原因となります。
生活習慣、ストレス、ホルモンバランスの変化
以上の要因などから肩関節に炎症が起こり、痛みを引き起こすと予想されています。
肩関節周囲炎を発症しやすい人、特徴
- 四十代、五十代の人に発症しやすい
- 姿勢の関与
普段から猫背の人はリスクが高まるとされています。 姿勢が悪いと、体にゆがみが生じやすく、肩関節、周囲の筋肉への負担が増加しやすいです。 - 食生活などの生活習慣が乱れている人、糖尿病などの生活習慣病の既往がある人
- 睡眠不足
肩周囲の血行不良に影響します。
男女差、左右差は特に認められず、運動習慣の有無もあまり関係ないようです。
治療
肩関節周囲炎の痛みだけに限って言えば、期間は様々ですが自然と治まっていきます。
疼痛は自然に軽快することが多いため、自然に治ったと思われる方がほとんどです。
しかし、自然経過のみで正しい治療をしなかった場合、疼痛は良くなったが可動制限が残ってしまうことがあります。
肩の動きは少し悪くなったが、痛みが良くなったから放置してしまうケースが多いです。
この肩関節が固くなってしまった(可動域制限がある)状況を拘縮肩と言います。
また、肩関節周囲炎で通院治療していた患者様の疼痛期間は平均で3~6ヶ月程度あったという報告もあり、痛みが予想よりも長引いてしまうこともよくあります。
その間に、疼痛が原因で肩を動かせていないと拘縮肩に移行してしまうこともがあります。
実際の治療
肩関節周囲炎は症状の段階に合わせて治療を変えていきます。
①痛みが強い時期(炎症期)
初期はじっと安静にしていても痛みがあり、夜間痛が強いことも多いため、この期間は過剰な炎症を様々な方法を使用して抑えることが大切です。
炎症部位の冷却、痛み止め・外用薬の使用、ステロイド注射などを行います。
肩はあまり動かさず安静に、極端に温めたりもしないでください。
ただし、安静にしすぎると拘縮が大きく残るというリスクもあります。
疼痛をコントロールして、動かせる範囲で動かしていくことが大切です。
個人差はありますが、おおよそ1~2週間が目安となります。
②痛みが弱くなってきたら(拘縮期)
痛みが緩和してくる頃には、安静にしていた影響もあり、肩関節周囲はかなり固く硬直しています。
この時期からは適度に患部を温めたり、肩関節や筋肉をストレッチしたり、可動域訓練を開始していきましょう。
③肩を動かせるようになってきたら
痛みもほぼ治まり、疼痛も少なく肩を動かせるようになりますが、まだまだ以前のような可動範囲ではないと思われます。
この時期からは可動域制限を軽減していくために、積極的にリハビリテーション・運動療法をしていきます。
個人差、症状にもよりますが、数ヶ月単位での介入が必要になることがあります。
肩関節周囲炎になってしまったら、痛みが引いてからが大事な時期です。
無理のない範囲で毎日ストレッチをし、可動範囲を広げ、症状を改善しましょう。
また、再び症状を悪化させないように、姿勢や食生活、生活習慣の改善にも取り組んでいきましょう。
無理のない範囲で毎日ストレッチをし、可動範囲を広げ、症状を改善しましょう。
肩関節周囲炎は再発したり、反対側の症状が出たりすることはよくあります。
予防
肩関節の柔軟性を保ったり、血流状態を保ったり、冷えすぎたりしないようにすることが予防につながる可能性はあるとは思いますが、原因がはっきりしないため明確な予防方法は現段階ではありません。
大切なのは肩関節周囲炎になってしまったら、早期治療を行い、最終的な関節の拘縮をなるべく起こさないようにするということと、再発を予防することです。
無理のない範囲でストレッチを日々行い、可動域を維持することが大切です。
自己流のストレッチ、無理に運動することで逆に肩の構成成分である腱板を中心とした軟部組織を損傷する可能性もあり、リハビリテーションなどをうまく活用していただけると良いと思います。
お気軽にご相談ください。
症状を再燃させないように、姿勢や食生活、生活習慣の改善にも取り組みましょう。
当院での治療方針
- ①問診
- ②身体所見、可動域などのチェック、肩関節周囲の特殊診察
- ③画像診断(エコー、必要であればレントゲン、MRIなど)
- ④症状に応じて、ステロイド注射、ヒアルロン酸注射、疼痛コントロールのための投薬治療、生活指導を含めたリハビリテーションの介入。
肩の注射も肩関節内、肩峰下滑液包、筋間など症状に合わせて部位を考慮しています。
凍結肩
一般的には3ヶ月程度はリハビリなどの保存的治療を行うことが多いですが、すでに長期間拘縮の状態、リハビリを数ヶ月行っても拘縮の改善傾向がない場合には積極的な治療として、関節受動術(サイレントマニプレーション、関節鏡視下での解離術など)を提案させていただくことがあります。
- 変形性頚椎症
- 頚椎椎間板ヘルニア
- ストレートネック(スマホ首)
- 頚椎捻挫(むち打ち損傷)、外傷性頚部症候群、寝違え
- 胸郭出口症候群
- 肘部管症候群
- テニス肘
- ゴルフ肘
- 野球肘
- 肘内障
- 肩腱板損傷・断裂
- 肩石灰沈着性腱板炎
- 肩関節周囲炎
(四十肩、五十肩) - 凍結肩(frozen shoulder)
・拘縮肩 - 頚肩腕症候群・肩こり
- ギックリ腰(急性腰痛症)
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 脊柱側弯症
- 胸腰椎圧迫骨折
- 腰椎分離症・分離すべり症
- ガングリオン
- ドケルバン病
- ばね指
- 母指CM関節症
- 指変形性関節症(へバーデン結節、ブシャール結節)
- 手根管症候群
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