痛風発作について
足の親指付け根(第1足趾MTP関節)が赤く腫れ、ひどい痛みが出ている病態が典型的な痛風発作で、暴飲暴食した後、激しい運動をした後などに症状が出ることが多いです。
「風が吹いても痛い」ということから、痛風と呼ばれています。
発作が起こると2、3日は歩行に支障が出るほどの痛みが出ます。
足の親指以外にも、足背部、アキレス腱周囲、足関節、膝関節、手関節、肘関節でも痛風発作の症状が出ることがあります。
痛風発作を何度か経験している人は、発作の前兆を感じることがあるようです。
関節症状以外では、耳介に痛風結節、尿路結石(尿酸結石)ができることもあります。
男性に多く、血液検査で高尿酸血症を認めるケースがほとんどです。
肥満、高血圧、脂質代謝異常などの生活習慣病を合併することも少なくありません。
原因
高尿酸血症の原因
尿酸は体内の新陳代謝により、プリン体が分解されて発生する老廃物で、尿から排泄されています。
体内の尿酸は、産生と排出のバランスを保ちながら一定の量に保たれるようになっていますが、尿酸が過剰に作られたり、排出がうまくいかなくなったりすると体内の尿酸が一定量を超えてしまいます。
こうして尿酸の血中濃度が7.0mg/dlを超えた状態が高尿酸血症です。
尿酸産生と排出のバランスが崩れる要因
暴飲暴食、激しい運動、腎機能低下・脱水など要因は様々です。
- プリン体の過剰摂取による尿酸産生
ビール、レバー、魚卵、甲殻類、干物などに、は多く含まれているため注意が必要です。 - 尿酸の産生過剰
体内組織損傷、過剰な運動などで、組織の代謝が高まり、起こります。 - 尿酸の排出低下
脱水、腎機能低下などによって、尿中にうまく尿酸が排出できない場合です。 - 混合型
産生過剰と排泄低下が同時に起こる場合です。
尿酸の排泄低下が60%、混合型で85%と報告されています。
アルコールの過剰摂取(体内でのプリン体産生増加、尿酸排出抑制の両方に働くため)、肥満(尿酸の排出低下が起こるため)では高尿酸血症になりやすくなります。
高血圧治療に使用される抗圧利尿剤などの投薬も高尿酸血症の原因となる場合があるようです。
高尿酸血症が継続すると、尿路結石、腎機能低下が起こり、尿酸排泄にはさらに悪影響が起こります。
痛風発作の原因
高尿酸血症は、それだけでは自覚症状はありませんが、持続すると血液に溶けきれなかった尿酸が結晶化して関節や組織に蓄積します。
関節にたまった尿酸結晶は異物として認識され、免疫細胞が反応することで炎症が起こり、痛風発作(急性関節炎、結晶誘発性関節炎)、痛風結節(耳介など)となります。
血液に溶ける尿酸の量と温度には関係があり、冷えやすい部位で結晶が生じやすいとする報告もあります。
痛風発作の危険因子
- 高カロリー食、動物性食品の過剰摂取、多量の飲酒など、プリン体の過剰摂取
- 激しい運動・脱水(体内の尿酸値が一時的に上昇するため)
- 精神的ストレス
プリン体は悪者なのか?
プリン体は、染色体のDNAを構成する核酸成分の1つで、生物が生命活動を行う際に必要不可欠なエネルギー源の1つでもあり、身体の維持には必須の物質です。
食事摂取によるプリン体と細胞の新陳代謝で産生されるプリン体があります。
飲食から体内に入るプリン体
レバー、エビ、魚卵、干物などの動物性食品、アルコール(ビール)に多く含まれます。
これらの摂り過ぎはプリン体の過剰摂取につながるとともに、アルコールは体内でのプリン体の合成(新陳代謝によるプリン体)を促し、尿酸の排出を抑制することがわかっています。
食事由来のプリン体は、染色体のDNA、核酸合成にはほとんど利用されずに尿酸に転換されることがわかっています。
症状
尿酸値が高いのみであれば、特に自覚症状はあらわれません。
- 痛風発作(第1足趾のMTP関節、結晶誘発性関節炎)
- 尿路結石(腰背部痛、腎機能障害)
高尿酸血症は、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常なども合併しやすく、動脈硬化のリスク因子であり、心血管イベントのリスクが高いと報告されています。
狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの血管系障害に注意が必要な病態です。
診断
痛風発作の確実な診断は、発作中の関節に尿酸結晶があることを証明することです。
関節穿刺液を顕微鏡検査で確認したりしています。
通常は、血液検査で尿酸値が高く、痛風特有の臨床症状があれば診断は可能です。
レントゲン
関節内に石灰沈着(結晶)が見られる場合があります。
これだけでは痛風かどうかは判断できません。
痛風に似た症状があらわれる「偽痛風」という病態もあり得ます。
血液検査
痛風発作が起きた直後は尿酸値が正常なこともあります。
発作時には炎症反応が高くなることが多いです。
同時に脂質代謝異常、肝機能、腎機能などもチェックします。
一般的には尿酸値が7.0mg/dlを超えるようであれば高尿酸血症であり、治療の対象です。
尿検査
厳密に原因を検索する場合には蓄尿し、尿中の尿酸値もチェックする場合があります。
セルフチェック
高尿酸血症、痛風は、アスリート、習慣的に飲酒する人に多いです。
プロ野球選手は同年代の一般人と比較すると5~7倍の罹患率とも報告されています。
その原因は、下記のような点が挙げられます。
- アスリートは食事量、飲酒量が多く、プリン体を摂取する機会が多い
- 激しい運動で組織損傷が起こり、体内でのプリン体産生増加、尿酸産生が増加しやすい
- 運動による発汗により、脱水になりやすく、尿酸排出が低下しやすい
- 激しい運動で尿酸合成が亢進し、排泄が低下している(筋原性高尿酸結晶、乳酸の蓄積に伴う腎臓からの尿酸排泄低下)
治療
尿酸は絶えず体内で作られ排出されています。
食事、運動環境を見直し、必要であれば内服薬を使用することで血中尿酸値をコントロールしなければなりません。
上記に挙げた発作の危険因子を減らすことも有効です。
期間に合わせた治療
痛風発作の前兆症状があればコルヒチンの使用(投薬)も有効です。
急性期、発作期には安静にしていただき、消炎鎮痛薬を使用します。
この時期に尿酸値を下げる治療は発作を誘発することがあるためできません。
安定期には、食事指導、運動療法、投薬などによる尿酸値を下げる治療を行います。
食事指導
プリン体を多く含む食べ物をチェックしておきましょう。
動物性食品やアルコールを控えて、野菜を多く摂る食生活に切り替えましょう。
食事由来のプリン体は、染色体のDNA、核酸合成にはほとんど利用されずに尿酸に転換されることがわかっています。
そのため、食事からのプリン体摂取量を減らすことが尿酸値のコントロールには有効です。
アルコールをなかなかやめれないという方は、プリン体オフのビールなどがお勧めです。
プリン体と戦う乳酸菌(尿酸値の上昇を抑制する)なども話題になりましたね。
果糖を含んだスポーツ飲料の大量摂取でも高尿酸血症になりやすいという報告もあります。
運動療法
強度の低い有酸素運動には血中尿酸値を下げる効果があり、逆に激しい運動では強度依存的に尿酸値が上昇すると報告されています。
適度な運動を継続的に行いましょう。
どのくらいの運動が良いのかは担当医師に相談してみましょう。
投薬
尿酸合成阻害薬、排泄促進薬などがあり、適宜選択して使用します。
痛風発作が治ってから、尿酸値をコントロールする薬を長期間服用することになります。
発作が起こらなくなったからといって投薬を自己中断するのは危険です。
再発作が起こることが非常に多く、長期的には尿路結石、血管系イベント(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞)が起こるリスクが高まります。
予防
尿酸値が急激に変動する際に痛風発作の症状が出やすく、温度変化が出やすい部位に起こりやすい傾向がありそうです。
痛風発作予防には暴飲暴食を極力避け、局所を冷やさないように気を付けることも有効だと思われます。
定期的な血液検査を行い、尿酸値、腎機能をモニターしていくことをお勧めします。
健康診断などで既に高尿酸血症を指摘されている人は、放置せずにしっかりと治療、対策をしましょう。
関連疾患
関連疾患として、低尿酸血症(血清尿酸値:2.1mg/dl未満)があります。
腎臓からの尿酸排泄が異常に亢進し、体内から尿酸がどんどん排泄されてしまう病態です。
尿中に尿酸がどんどん出ていくため、尿路結石、運動後の急性腎不全が起こりやすく注意が必要です。
血清尿酸値が1.0mg/dl未満の男性に多く、特に脱水に注意する必要があります。
日本人での有病率は0.3%くらいといわれています。
当院でできること
- 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
- 投薬、食事指導による保存的治療
- 専門スタッフによる運動療法(運動強度設定など)
痛風の初期治療、高尿酸血症単独の場合は当院で治療させていただきます。
高血圧、高脂血症、腎機能障害、脂肪肝、肝機能障害なども合併している場合には内科での総合的な治療が望ましく、必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
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