Jones骨折とは?
第5中足骨近位骨幹部に発症した疲労骨折をJones骨折と呼び、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、ステップ・ピボット動作を多用するスポーツに多い疾患です。
Jones骨折の発症ピークは19歳前後で、女性よりも男性に多いです。
サッカーでの受傷が有名で、その発症頻度は0.05人/1000時間と報告され、100人のチームで毎日2時間練習すると年間3人くらい骨折するくらいの頻度です。
Jones骨折を撲滅する目的でJones骨折研究会が設立され、スポーツ関係者(選手、指導者、アスレティックトレーナーなど)、医療従事者間での情報交換なども盛んになりつつあります。(詳しくはホームページを参考にしてみてください。)
原因
第5中足骨近位部には、靭帯・筋腱が付着し、重要な役割をしています。
- 中枢部の立方骨と連結する靭帯、内側の第4中足骨間を連結する靭帯
- 足部の外反などに重要な役割をしている短腓骨筋、第3腓骨筋
第5中足骨基部の構造
- ZoneⅠ:第5中足骨の近位で短腓骨筋が付着する部位
- ZoneⅡ:ZoneⅠよりも少し遠位で第3腓骨筋が付着する部位
- ZoneⅢ:ZoneⅡよりも少し遠位部
ZoneⅡ、Ⅲに起こった疲労骨折はJones骨折と呼ばれ、骨癒合が得られにくいことがあります。
ZoneⅡに生じた疲労骨折を狭義のJones骨折と呼ぶこともあります。
ZoneⅠなど、第3腓骨筋付着部より近位の骨折は基本的には短腓骨筋による剥離骨折で、経過は良好と報告されています。(下駄骨折もこの部位に相当します。)
受傷機転
第5中足骨遠位の中足骨頭に荷重した際に床からの地面反力が加わると、第5中足骨近位の靭帯・腱付着部のすぐ遠位に歪み応力が生じ、この応力の繰り返し負荷により疲労骨折が起こると想定されています。
具体的には、足関節を底屈した状態で前足部に内向きの力が加わった場合に発症しやすいと報告されています。
危険因子
内因性の危険因子
- 年齢:発症のピークは19歳ですが、もちろんそれ以外の年齢でも起こり得ます。
- 性別:男性に多くみられます。
- 足部の解剖学的な形状:長く、狭く、ストレートな中足骨の骨形状
- 足部外側での荷重、バランス不良:前足部の内反、後足部の外反がある場合
- 可動域制限:股関節内旋角度が30度以下と制限がある場合
- 筋力低下:体幹、股関節周囲、足関節、足部など全身の筋力低下が関与します。
- 栄養不足:血液検査で25ハイドロキシビタミンD(25-OHD)濃度が低い場合
外因性の危険因子
下記の要因が挙げられます。
- 練習量過多、不適切な練習
- 人工芝、硬いグランドでプレーする割合が高い
- 不適切なシューズ選択
症状
方向転換などのステップ動作で第5中足骨近位部に痛み、違和感が生じます。
違和感のみで、スポーツ中以外には症状がないこともあり注意が必要です。
診断
レントゲン
不全骨折(骨皮質の肥厚、Beak sign)、完全骨折の有無をチェックします。
骨折の場合、骨折部位にも注意が必要です。(Jones骨折、剥離骨折、下駄骨折など)
また、骨端症(Iselin病)、過剰骨(Os Vesalianum)などとの鑑別も行います。
エコー
ハンプサイン(ラクダのこぶ)などを確認します。
ある程度は不全骨折、完全骨折を見分けられる可能性があります。
MRI
レントゲン、エコーなどではっきりしない場合、必要であれば撮影します。
MRIで骨挫傷などがわかるケースもあります。
セルフチェック
第5中足骨近位部の圧痛をセルフチェックしましょう。
ステップ動作時の疼痛、違和感などがあれば要注意です。(痛みには個人差があります。)
治療
保存的治療
外固定(ギプス、シーネ、装具)
外固定(ギプス、シーネ、装具)を行い、安静を保ちます。
インソール(足底板)の使用
インソール(足底板)を使用することで足部アーチを支え、外側への荷重量を軽減します。
リハビリテーション
リハビリテーションで、スポーツ復帰に向けて、足関節、足指を中心に機能訓練を行います。
リハビリでは、骨癒合が得られるまで、危険因子をなるべく減らすように指導します。
具体的には、足部外側荷重にならないように胸郭、体幹、股関節、膝関節でうまく衝撃を吸収するような動作を獲得したり、股関節周囲の可動域訓練、上半身も含めたバランス調整などを指導します。
当院では医師、リハビリ専門スタッフがスポーツ種目、個人に合わせたリハビリプランを提供させていただきます。
外科的治療
骨折が治りにくいと判断される場合や高い活動性が求められる選手ではスポーツ復帰までの期間などを考慮し、スクリュー固定などによる手術加療を提案することもあります。
外科的治療をお勧めする場合は専門施設に紹介させていただきます。
予防
危険因子に受傷機転動作が加わることでJones骨折が起こると想定されていますが、危険因子のうち、以下のものは正しい介入を行うことで骨折リスクの軽減が図れる可能性があり、骨折予防効果が期待されています。
- 内因性危険因子:外側荷重、バランス不良、可動域制限、筋力低下、栄養不足
- 外因性危険因子:練習量過多、不適切な練習、シューズの問題
下記の点を意識してみましょう
- 外側荷重の是正:動作改善、トレーニング、インソールの使用、適切なシューズ選択する
- 関節可動域の拡大と維持(足関節背屈、股関節内旋)
- 筋力強化(股関節、足関節、足趾):足趾筋力強化、股関節外転筋強化、バランス改善をする
- 栄養補給(特にビタミンD)と休息を適切にとる
- 適切な練習メニュー
- 目的によるシューズの履き替え:天然芝と人工芝でシューズを履き替える
指導者が知識を持つことも大切です
また、選手のみならず、指導者がJones骨折に関する知識を持つことも大切です。
- 選手、指導者に骨折の発生要因の啓発を行い、骨折への理解を促す。
- 予防に対する指導者、家族の理解と協力を促し、予防策の徹底と継続を推進する。
早期発見・早期治療が肝心
Jones骨折は、完全骨折になると手術が必要になることが多いです。
不完全骨折の段階で発見し、早期からの治療介入、リスク因子を減らすことが大切です。
初期症状が足部外側の違和感のみの症状のこともあります。
サッカー検診で症状が軽微なうちに病変を見つけ、適切に対処しておくことが大切です。
心配であれば、整形外科医師に相談してみましょう。
当院でできること
- 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
- 投薬、補装具を使用した保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション
- 手術術後の回復リハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
当院でできないこと
当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。
必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
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