中野区新中野の整形外科 リハビリテーション科 新中野整形・リハビリテーションクリニック 中野富士見町

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頚椎捻挫(むち打ち損傷)、
外傷性頚部症候群、寝違え

頚椎捻挫(むち打ち損傷)

頚椎捻挫(むち打ち損傷)

頭頚部に外力がかかることで生じるけがです。

症状はさまざまで個人差があり、後頭部、頚部、背部、肩部など広範囲に痛みや違和感を自覚したり、場合によっては耳鳴り、めまいなどの自律神経症状を生じることがあります。

追突事故などの交通事故、転倒などにより、頭頚部が短時間に前後に振られることで生じることが多いとされています。

かつては「むち打ち損傷」と言われていました。

原因

外力により頭頚部を固定している筋肉・靭帯、椎間関節、椎間板、頚髄、頚椎神経根を痛めてしまうことが主な原因です。

交通事故、コンタクトスポーツ、転落などによって、頭部や顔面を強打したり、強い力が加わる反動で頭頚部が大きく振られた際に発生します。

自動車事故の場合

追突された場合

追突された人の体は事故の衝撃により進行方向に移動しますが、頭部は元の位置にとどまろうとします。

その結果、「頚部は、くの字型、頭部は、後ろに反る格好」になります。

次に、反動で「頭部は、前方に振られ、頚部は、くの字型とは反対方向にしなる形」になります。

身構えていない状態で追突されるため頭部は予想以上に大きく揺さぶられます。

追突した場合

正面衝突の場合には、体、首、頭の動きが追突された人とは逆になります。

頭頚部の急激な動きで椎間板、椎間関節中心にダメージを受け、後方にある棘突起をつなぐ棘上・棘間靭帯や頚椎前後の筋肉が引き伸ばされてダメージを受けると考えられます。

頚部前方の胸鎖乳突筋や後方の僧帽筋などの筋群に痛みが生じます。

いずれにせよ、事故による外力で、重たい頭部を支えている頚部が無理な形になることにより、頚椎周囲の筋肉・靭帯、椎間関節、椎間板、脊髄、神経根に損傷が起こります。

頚椎捻挫のタイプ

捻挫型(筋肉型、椎間関節型)

頚部・肩の痛み、動かしにくいなどの症状が出現します。

頚椎捻挫の70~80%がこのタイプです。

神経根型

頚部の痛み、上肢の知覚異常が主な症状として出現するタイプです。

頚椎神経根が挟み込まれたり、圧迫されることで症状が起こります。

頚椎の動き、咳・くしゃみで強い痛み、しびれが神経根支配領域に出現します。

脊髄型

下肢のしびれや知覚異常など、頚部、上肢よりも下肢の症状の出現が目立つタイプです。

歩行に影響が出たり、膀胱直腸障害が出るケースもあります。

頚椎神経根・脊髄症状の状況によっては、ペインクリニック、脊椎専門外来に紹介することを提案させていただき、MRIなどで精査、場合によってはブロック治療、手術が行われる場合もあります。

Barre-Lieou型(バレー・リュー型)

後頚部の痛みとともに、めまい、耳鳴り、難聴、視力障害など様々な頚部交感神経による自律神経系の異常が起こるタイプです。

不眠などの不定愁訴的な症状も合併することがあります。

筋力の弱い女性、外傷後に適切な安静が保たれないとこのタイプが起こりやすいという報告もあります。

症状

後頚部から背部の痛み、頚部の可動困難、頭痛、漠然とした凝り、違和感、上肢しびれなど症状はさまざまで個人差があります。

場合によっては耳鳴り、めまいなどの自律神経症状を生じることもあります。

事故直後から症状を自覚する方もいますが、事故当日は、精神的な緊張のせいか、症状に気がつかないこともよくあります。

事故後、筋損傷部に微小な血腫などがゆっくり出現してきて翌日以降に症状を自覚することもあります。

多くは2~3ヶ月以内に徐々に症状が緩和しますが、数ヶ月、数年と症状が継続してしまうケースも残念ながらありえます。

脳脊髄液減少、脳脊髄圧変化などの合併症が起こっている可能性も指摘されています。

症状が軽くても受診することが大切です

頭部、顔面を強打している場合は頚部だけでなく、脳震盪、脳挫傷、血腫など脳損傷の可能性もあるため、症状が軽くても自己判断は避けてきちんと病院を受診することが大切です。

また、頚椎捻挫で受診された際に、腕神経叢症状、胸郭出口症候群などの神経症状を合併する場合もあり、適切な診断が必要です。

診断

受傷時の状況、自覚症状(痛み、しびれの部位、自律神経症状)などの問診が重要です。

身体所見

頚椎の可動域制限、圧痛、筋力低下、知覚異常の有無をチェックします。

画像

レントゲンで骨折・脱臼がないことを確認し、椎間板の高さ、変形の有無をチェックします。

レントゲンで外傷性変化を認めることはほとんどありませんが念のためチェックしています。

外傷前から変形性頚椎症、椎間板高減少がありそうかもチェックしておきます。

症状によってはMRIをおすすめし、神経根、脊髄、椎間板損傷などレントゲンでは診断が正確にはできない病態の有無をチェックします。

治療

局所の安静

症状が軽度であれば、局所の安静のみで改善する場合もあります。

症状の程度が強い場合や、レントゲン、MRIなどの画像チェックで骨・軟部組織に損傷が認められた場合には、頚椎カラーによる頚部の外固定を急性期に行うことがあります。

ただし、不必要な頚部固定や長期の固定は症状を遷延させる可能性があり注意が必要です。

安静期間はできるだけ短い方が良いでしょう。

投薬

痛み止め、外用薬を使用することで急性期の痛みを緩和します。

痛み止めにもいろいろな種類があり、弱めの痛み止め、通常の痛み止め、神経系の痛みに効果が期待できる薬など、症状によって使い分けています。

リハビリテーション

骨折や脱臼がなければ、急性期の安静後は頚椎を動かしていくことが症状の長期化予防に大切です。

慢性期には安静や生活制限は行わずにストレッチを中心とした体操をしっかり行うことが最良の治療となります。

温熱療法、牽引療法などの物理療法以外にも、リハビリテーションによる局所の柔軟性訓練、筋力訓練、機能訓練などが症状の緩和に有効です。

当院では、医師、リハビリ担当者から適切なセルフエクササイズの指導などを行っています。

上記のような保存的治療を行なっているにもかかわらず、症状が強く、長期に遷延する場合には、ブロック治療、脊椎専門外来受診などをお勧めさせていただく場合もあります。

注意

交通事故によって生じた頚椎捻挫は通常の保険診療ではなく、自賠責保険による診療となるため、適切な時期に適切に画像診断を含めた医師の診察、診断を受けることが大切です。

交通事故後、しばらく経過してから画像評価を行なっても事故による外傷なのかがはっきりしないことがあります。

医師の診断なく整骨院や整体などで漫然と加療を続けた場合には、診断書の交付や因果関係の証明がなされずに補償上の不利益を被ることがあります。

交通事故での受診について詳しくはこちら

よくある質問

交通事故後の頚椎捻挫は、冷やしたほうがいい?温めたほうがいい?

症状、部位にもよりますが、局所の熱感、腫れ、発赤がある急性期には冷却していただき、数日後からは、温めることで症状が楽になるようであればそれも良いでしょう。

同様に、筋肉・靭帯が損傷を受けていたり、炎症症状がある急性期にはマッサージは控えていただいたほうが良いケースが多いです。

数日後からは、マッサージにより筋肉の緊張緩和、循環改善することで症状が緩和することもあります。

リハビリテーションは必要?

リハビリで頚椎捻挫自体を治すことはできませんが、痛みや動かしづらい症状を緩和する効果には期待できます。

症状が緩和することにより普段の生活を行えるようであれば行う価値があるでしょう。

物理療法とストレッチ、筋力強化などを組み合わせて行うことが多いです。

事故後はどのくらいの期間通院できますか?

一般的には症状が軽快するまで通院することが勧められます。

多くは2~3ヶ月以内に改善することが多いですが、長期間症状が持続してしまう患者さんも残念ながらいらっしゃいます。

交通事故による自賠責保険での診療では、そのようなケースの場合、「症状固定」と言って治療効果が認められなくなった時点で自賠責保険による治療は終了することが一般的です。

その際、症状が残存してしまった場合は後遺障害として後遺症診断を行い、健康保険による治療に移行します。

交通事故による頚椎捻挫は、頚椎が神経、血管の集中した部位であることや、交通事故に関わる補償の問題、感情的な要因など、様々な理由から治療が長引きやすいとされています。

通院の頻度や期間、後遺障害認定などは個々の事例によって大きく異なりますので担当医、保険会社の担当者様ともしっかり相談することが大切です。

むち打ち症

いわゆる「むち打ち症」は、自動車のヘッドレストが整備されていない時代に追突・衝突などの交通事故で頚部が鞭のようにそってしまうことで生じた頚部局所症状の総称です。

近年、自動車のヘッドレストが標準装備されたことで「むち打ち症」と呼ばれることは減少しましたが、現在でも医学的な傷病名と混同して使用されることがあります。

同様に、外傷性低髄液圧症候群、外傷性髄液減少症など、正確とは言えない病名が付けられることも少なくはありません。

医学的な傷病名ではないので、外傷性頚部症候群(頚椎捻挫、頚部挫傷)、神経根症(頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症)、頚髄損傷など、医師の専門的診断を受けることが必要です。

外傷性頚部症候群

頚椎捻挫、頚部挫傷などが含まれる病態と考えられています。

類似した頚部症状をきたす疾患

寝違え

類似した頚部症状をきたす疾患に、「寝違え」があります。

眠っていて目が覚めた時に、後頚部や肩にかけての痛み、頚部の可動域制限が出ることがあり、いわゆる「寝違え」です。

想定されている原因

諸説ありますが、はっきりしません。

  • 睡眠中に不自然な姿勢が続き、筋肉の一部に血流障害が起こりしこりになった。
  • 前日などに普段しないスポーツ、労働をして、一部の筋肉が痙攣した。(こむら返り)
  • 頚椎後方にある椎間関節を構成する関節包に炎症が起こった。

筋肉の血流不全、疲労や関節包の炎症が起こる原因

筋肉の血流不全、疲労や関節包の炎症が起こる原因として考えられるのは、以下のような点があります。

上肢の使いすぎ

手で重たいものを保持する動作は後頚部の筋肉にも負担がかかります。

同一姿勢の持続

飲酒後、疲労困憊時の睡眠などでは寝返り動作が少なくなります。

長時間のパソコン、事務作業は頭部を保持するための頚部の筋肉に負担がかかります。

いずれにしても「寝違え」は、外傷(けが)ではなく過労性疾患と言えそうです。

診断、症状

検査、画像診断では異常を認めないことが一般的です。

起床時に頚部が痛くなり、数時間から数日で症状が軽快するのが経過としては一般的です。

「寝違え」の場合、頚椎可動域は制限されていますが、その他には異常がないはずです。

寝違えの後、痛みが強い場合、長期化している場合には整形外科を受診し、他の病気の可能性がないかは調べておきましょう。

頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症、転移性頚椎腫瘍、脊髄腫瘍、強直性脊椎炎、関節リウマチなどの病気の可能性もありますし、肩こり症状が強いだけの場合もあります。

整形外科では、頚部痛以外に手足の痺れ、手足の動き、知覚、深部腱反射は正常か、レントゲンで異常所見はないかなどをチェックします。

予防と治療

「寝違え」が起こった際の急性期には動かすと痛むため、痛みのある方向には動かさずに安静を保持するのが良いでしょう。

外用薬は炎症を抑えて痛みを緩和するため痛みの強い部分に貼るのは有効です。

消炎鎮痛薬の使用も有効でしょう。

可能であれば軽いストレッチ、マッサージも有効です。

ただし、痛みを我慢してまでストレッチ、マッサージしたりするのは逆効果の場合があります。

筋肉の痙攣が原因の場合には、こむら返りの治療で使用する漢方薬(芍薬甘草湯)が有効なこともあり、痛みの強い筋肉、筋膜に局所麻酔薬を注射する方法(トリガーポイント注射)が有効な場合もあります。

治療の効果を見ながら治療方法を変えていく必要があるため整形外科受診がお勧めです。

当院でできること

  • 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
  • 投薬、注射、補装具を使用した保存的治療
  • 専門スタッフによるリハビリテーション
  • 手術術後の回復リハビリテーション

診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。

当院でできないこと

当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。

必要であれば専門外来に紹介させていただきます。

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