人体には一般的に12個の胸椎、5個の腰椎があります。
何らかの原因により胸椎、腰椎に骨折をきたした病態が胸腰椎圧迫骨折です。
骨折の部位、形態によって無症状、痛みのみ、神経麻痺など様々な症状を引き起こします。
典型的には、骨粗鬆症を起因とする胸腰椎圧迫骨折が胸椎と腰椎の移行部(胸腰椎移行部)に骨折が起こることが多いです。
その他にも骨腫瘍、強い外力に起因する骨折があります。
原因
骨粗鬆症がある場合
転倒、尻もちなどの軽微な外力が椎体にかかり生じます。
中腰姿勢で重たい物を持ち上げ胸腰椎移行部に力が集中した際に生じます。
典型的な例として、鉢植えを移動する際、荷物を運ぶ際などがあります。
転移性骨腫瘍がある場合
腫瘍が転移した椎体は強度が弱く、軽微な外力でも骨折することがあります。
強い外力がかかった場合
高所からの転落などで骨折することがあります。
典型的な例として、着地に成功しても踵の骨折、垂直外力から脊椎の圧迫骨折が発生することがあります。
症状
骨折の形態と症状
椎体の前方のみが楔状に圧壊する場合
該当部に痛みが出ることが多いですが、ほとんど痛みがないこともあるようです。
椎体の後方要素を含めて圧壊する場合(破裂骨折)
椎間関節の不安定性、脊髄の通り道である脊柱管にも影響することで脊髄損傷、神経根症状が出現することもあります。
原因別の症状
骨粗鬆症に起因した胸腰椎圧迫骨折
胸腰椎移行部に生じることが多いです。
痛みが軽度、もしくはほとんど痛みを感じないこともあります(いつのまにか骨折)。
転倒、尻もちなどの外力が加わって生じたものでは、通常は骨折部に痛みを伴います。
転移性骨腫瘍による胸腰椎圧迫骨折
骨折部の体動時の痛みの他、安静時にも痛むことが多いです。
強い外力により生じた胸腰椎圧迫骨折
他の骨軟部損傷を伴うことも多く、脊髄損傷を生じる場合もあります。
骨折部位にもよりますが、胸腰椎移行部に生じた場合、重症では両下肢麻痺が生じるなど、様々な症状を引き起こします。
胸腰椎圧迫骨折が多発性に生じた場合
以下の症状がみられるようになります。
胸腰椎圧迫骨折後の偽関節
椎体の骨折部がうまく癒合せず、骨折部に不安定性が残る偽関節という病態になると体動初期に偽関節部が動くことで痛みが残存しやすいです。
例えば、仰臥位からの起き上がり、逆に起きている状態から仰臥位になった際に痛みが生じます。
診断
問診、身体所見
外傷歴、骨粗鬆症の既往、痛み、叩打痛、神経学的所見などをチェックします。
レントゲン
骨折部位を確認し、骨折状況が椎体の前方のみなのか、後方成分まで及んでいるのかなどをチェックします。
偽関節が疑われる際には、座位・仰臥位で撮影することもあります。
受傷直後にはレントゲンでは圧迫骨折を確認できない場合もあり注意が必要です。
CT、MRI
骨折部の状況、身体所見によっては必要になることがあります。
転移性骨腫瘍が疑われる場合にはMRIなどの精密検査をおすすめする場合があります。
また、胸腰椎圧迫骨折様の症状は認めるもののレントゲンでは骨折部の確認が困難な場合にはMRIでの評価をおすすめする場合もあります。
レントゲンでは椎体の圧壊はないもののMRIでは骨挫傷様変化が認められ、骨折に準じた治療が必要になる場合もあります。
骨粗鬆症検査
骨粗鬆症が疑われるものは骨密度(DEXA)、血液検査などもおすすめします。
(骨密度低下がなくとも脆弱性骨折を認めた場合には骨粗鬆症治療開始を提案します。)
治療
骨粗鬆症がある場合
外固定を行うことで脊椎の安定性を保持し、比較的安静にします。
痛みは3~4週程度で落ち着くことが多いです。
ギプス、軟性コルセット、硬性コルセットなど状況に応じて選択します。
骨粗鬆症治療、リハビリテーションも併せて行うことが大切です。
骨折を起こした隣接椎体で骨折が起こることが多いため注意が必要です。(ドミノ骨折)
転移性骨腫瘍がある場合
原疾患不明であれば原疾患の検索を該当科と連携して行います。
原疾患があれば、そちらの治療と並行して治療を行います。
場合によっては、骨粗鬆症、抗癌剤、放射線、重粒子線治療なども併用します。
強い外力がかかった場合
他のリスクが低いと判断した場合は、外固定を行い早期に離床し、歩行訓練を行います。
ギプス、軟性コルセット、硬性コルセットなど、外固定の方法は状況に応じて選択します。
外科治療を提案する場合
基本的には保存的治療が選択されますが、外科治療を提案する場合もあります。
- 圧迫骨折の程度が高度で胸腰椎間の不安定性が強く、内固定の追加が必要な場合
- 神経の通り道である脊柱管に問題があり、除圧、内固定の追加が必要な場合
- 強い症状があり、除圧、内固定などが必要な場合
- 偽関節になった場合にはBKPなどの治療も提案することがあります。
BKP(Balloon Kyphoplasty)治療
潰れてしまった椎体を風船で膨らまし、内部に骨セメントを充填することで骨折前の形に近づけ安定させ、疼痛を緩和する治療です。
早期から疼痛が緩和することが多いですが、骨セメントを使用することで隣接する椎体の強度が相対的に弱くなる可能性があり、隣接椎体骨折には注意が必要です。
予防
転倒予防
転倒しないように下肢筋力を強化することが大切です。
骨粗鬆症治療
過去に脆弱性骨折(脊椎、大腿骨近位部、上腕骨近位部、手関節)がある場合、もしくは骨密度検査で骨粗鬆症を指摘されている場合にはしっかり治療しておきましょう。
当院でできること
- 身体所見、レントゲン検査からの診断
- 投薬、注射、補装具を使用した保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション
- 手術術後の回復リハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
当院でできないこと
当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。
必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
- 変形性頚椎症
- 頚椎椎間板ヘルニア
- ストレートネック(スマホ首)
- 頚椎捻挫(むち打ち損傷)、外傷性頚部症候群、寝違え
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- 肩腱板損傷・断裂
- 肩石灰沈着性腱板炎
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(四十肩、五十肩) - 凍結肩(frozen shoulder)
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