扁平足とは
扁平足は、足部の縦アーチが低下することにより「土踏まず」が潰れ、足裏が平らになった状態です。
幼児期扁平足と成人期扁平足があります。
歩行開始前の幼児期は、誰でも扁平足の状態です。
成人期の扁平足は、女性に多く発生すると報告されています。
開帳足
開帳足は、足趾の付け根を横に連結している足部の横アーチが低下することにより、足趾が横に広がってしまった状態です。
歩行、走行時における足部アーチ(縦アーチ、横アーチ)の役割
衝撃を吸収する作用
地面から足部にかかる荷重時の衝撃をバネのようなイメージで吸収する役割があります。(トラス機構)
効率よく地面に力を伝達する作用
地面を蹴る際に足の剛性を高めて効率よく地面に力を伝達します。(ウインドラス機構)
簡単に言えば、荷重時に体重を支え、効率よく歩行、走行するのに役立っています。
ウインドラス機構とは
足趾伸展時に足のアーチ構造が高まることで足部が安定する機構です。
(足趾を伸ばすと土踏まず部分がピンと突っ張る感じになりますよね。)
足部のアーチ構造を支える筋肉
足部のアーチ構造を支える筋肉には、後脛骨筋、屈筋群(長母趾、長趾)、前脛骨筋、腓骨筋、足趾間を横に連結する骨間靭帯などがありますが、その中でも、メインは内側の後脛骨筋と考えられています。
足関節内くるぶしの後下に、後脛骨筋腱が通っていて、舟状骨を引き上げることで内側縦アーチを保持しています。
もしも、加齢による腱の変性や体重負荷によって、この腱が断裂すればアーチが低下することになり扁平足の原因となります。
歩行を開始する以前の乳幼児には、足部に衝撃がかからないため土踏まずはなく、成長につれて歩行が開始されると自然に足部アーチが形成されていきます。
原因
幼児期扁平足の場合
幼児期は靱帯が緩んでおり、踵が外を向いてアーチが低下していますが、歩行開始で荷重するようになると徐々にアーチが形成されていきます。様子を見ましょう。
ただし、尖足、内反足などの先天的な病気が原因のこともあるため変形の程度が強い場合には整形外科医師に相談してみましょう。
成人期扁平足・開帳足の場合
想定されている足部アーチ保持力低下の原因は下記の通りです。
- 長時間の立ち仕事、歩行、走行による筋腱・靱帯の損傷
- 加齢、体重増加による筋腱・靭帯の変性、損傷
- 筋力低下
- 女性ホルモンの影響
その他
扁平足の原因となる疾患、病態には、以下があげられます。
- 外脛骨:舟状骨の過剰骨による後脛骨筋機能不全(筋肉付着部のため)
- 腓骨筋痙直:腓骨筋が過剰に働くことによるもの
- 足根骨癒合症(距骨踵骨間、踵骨舟状骨間、舟状骨楔状骨間など)
現代人に扁平足が多い理由
現代人に扁平足が多い理由として、下記のような原因が考えられています。
- 幼少期にゲームなど家の中で遊ぶことが多く、外遊びの機会が減少したこと
- 成人では、車での移動が多く、歩行する機会が減少したこと
- 高齢になるにつれて活動量が低下したこと
- 道路が整備され、地面の凸凹でバランスを取らなくてもよくなったこと
- 肥満などの過剰な体重増加により、アーチ構造にかかる負担が大きいこと
症状
外見
幼児期では、歩き初めの時期に足の裏が平べったいことに家族が気づき来院されます。
成人の単純型扁平足ではアーチが低下しているだけですが、外反扁平足では踵骨が外反し、後方から踵を見ると「ハの字」のように見えます。
痛み
激しい運動をする人では痛むこともありますが、無症状のこともよくあります。
また、爪先立ちに問題が起こり、歩行時の疲れやすさを自覚されます。
足が疲れやすくなり、足裏、甲の痛み、進行すると歩行障害も起こり得ます。
診断
視診・触診
視診・触診では、下記の点をチェックします。
- 立位荷重での足部アーチの低下、踵骨外反(heel leg angle)
踵の外反が強いと後ろから複数の足趾が見えるようになります。(too many toe sign) - 前足部の内外転、内外反、足底の胼胝形成状況
- 普段使用している靴の靴底の片減りや踵部のすり減り方
- 筋腱・靭帯の緊張状態、左右差(アキレス腱、後脛骨筋、前脛骨筋、屈筋群、腓骨筋など)
筋腱・靭帯の機能不全状態のみであれば、荷重時のみの扁平足で、非荷重時にはアーチが戻る可逆的な状態ですが、経過で靱帯などが弛緩してしまうと、非荷重時にも扁平足になる固定された状態になり、装具での矯正も困難で治療に影響します。
幼児期は足底の脂肪が厚く、扁平足でなくてもアーチがわかりにくいことがあるので注意が必要です。
身体所見(動作確認)
爪先立ちが可能かチェックします。
また、爪先立ちの際に踵がきちんと内反するか、後脛骨筋が機能しているかをチェックします。
同時に、動作時における足部の内外反、膝のアライメントもチェックします。
レントゲン
荷重時のレントゲンで正面像、側面像をチェックします。
正面像
- M1/M2角:第1-2中足骨のなす角度で、母趾の内反程度を評価します。(開張足の評価)
- M1/M5角:第1-5中足骨のなす角度で、開帳足の評価を行います。
側面像
Calcaneal pitch、距骨底屈角などをチェックし、扁平足の評価を行います。
重症度判定時には距骨角度と第1中足骨の織りなす角度をチェックしたりもします。
同時に外反母趾の有無、足根骨癒合症などの評価もおこなっています。
必要であればCT、MRIなども提案します。
セルフチェック
足の裏の胼胝(たこ)を触ってチェックしてみましょう。
通常は第1足趾、第5足趾、踵、指先で荷重を受けるためそちらが硬くなりますが、開帳足では横軸アーチが低下しており、第2足趾あたりに胼胝ができています。
また、フットプリント(足跡)で重症度を判定する方法もあります。
扁平足のでは、足跡の内側が凹まずに舟状骨部が突出します。
そのほか、靴底のすり減り方をチェックしてみましょう。
幼児期扁平足の予防と治療
ほとんどの場合、成長に伴って10~15歳までに自然にアーチが形成されます。
裸足の生活を心がけ、足の指を使用して足の裏の筋肉を鍛えましょう。
爪先立ち、足の外側縁で歩行する練習、鼻緒のある履き物も効果があります。
足趾ジャンケンなどで遊びながらエクササイズするのも良いでしょう。
アーチ低下が著しい場合には、アーチサポート付きの足底挿板の処方も考慮します。
ただし、尖足、内反足などの先天的な病気が原因のこともあるため変形の程度が強い場合には整形外科医師に相談してみましょう。
成人期扁平足・開帳足の予防と治療
保存的治療
日常生活指導
まずは、現在よりもアーチを低下させないようにしましょう。
足趾筋を鍛えるために裸足での生活を心がけ、足趾を使用するようにしましょう。
足趾ジャンケンなどのエクササイズも有効です。
適正体重を維持し、足部アーチへの負担をかけすぎないようにしましょう。
適切な靴の選択も大切です。
開帳足の人は幅広の靴を選びがちですが、幅が広いだけだと横軸アーチはさらに低下するリスクが高いです。
インソールなどで中足骨パッドを使用したり、アーチサポートを使用したりして横アーチを支えることが大切です。
投薬
痛みを緩和する目的で消炎鎮痛薬、外用薬を使用することもあります。
リハビリテーション、物理療法
筋力強化(足趾、後脛骨筋、腓腹筋)、ストレッチ(足底腱膜、下腿三頭筋、前脛骨筋、長趾伸筋、腓骨筋、踵部など)を行うことでアーチ低下を予防しましょう。
物理療法で筋腱を健全な状態に保つことも有用と考えます。
装具療法
アーチの低下が明らかな場合には、アーチサポート付きの足底挿板が処方されます。
アーチを上げることにより痛みの緩和を目指します。
外科的治療
重症例では手術が必要になることがあります。
専門施設にご紹介させていただきます。
おまけ
扁平足と運動連鎖
(扁平足があると起こってくる様々な疾患と病態)
扁平足(縦アーチの低下)があると、経過で横アーチも低下してきて開帳足、距踵関節の回内、踵骨の外反が起こり、膝の外反・下腿の外旋傾向が引き起こされます。
このような状態はKnee In Toe Out(KITO)と呼ばれ様々な障害の誘因となることが報告されています。
膝レベルでは、膝関節内側の伸長、外側の圧縮、膝蓋骨の外方偏位が起こります。
また、扁平足によりアーチが低下すると、衝撃吸収能力の低下、ウインドラス機構不全から足部での反力伝達が不足し、その分、下腿三頭筋、アキレス腱への負担が増えます。
結果として、膝蓋骨亜脱臼、膝蓋大腿関節症、鵞足炎、たな障害、シンスプリント、アキレス腱内側炎、後脛骨筋炎、有痛性外脛骨、外反母趾、膝関節内側側副靱帯損傷、前十字靭帯損傷、外速半月板損傷、足関節三角靱帯損傷、遠位脛腓間靭帯損傷などの様々な疾患が起こりやすい状況になります。
これらを予防するためにも扁平足の治療、予防が大切ですね!
甲高と運動連鎖
(アーチが高い甲高で起こってくる様々な疾患と病態)
ハイアーチでは、距踵関節の回外、踵骨の内反が起こり、膝の内反、下腿の内旋が引き起こされます。
このような状態はKnee Out Toe In(KOTI)と呼ばれ様々な障害の誘因となります。
膝レベルでは、膝関節外側の伸張、内側の圧縮が起こります。
結果として、腸脛靱帯炎(ランナー膝)、膝蓋靱帯外側部炎、アキレス腱外側炎、腓骨筋炎、内反小趾、膝関節外側側副靭帯損傷、内側半月板損傷、足関節前距腓靭帯損傷などの様々な疾患が起こりやすい状況になります。
当院でできること
- 身体所見、レントゲンからの診断
- 投薬、補装具を使用した保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション
- 手術術後の回復リハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
当院でできないこと
当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。
必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
- 変形性頚椎症
- 頚椎椎間板ヘルニア
- ストレートネック(スマホ首)
- 頚椎捻挫(むち打ち損傷)、外傷性頚部症候群、寝違え
- 胸郭出口症候群
- 肘部管症候群
- テニス肘
- ゴルフ肘
- 野球肘
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- 肩腱板損傷・断裂
- 肩石灰沈着性腱板炎
- 肩関節周囲炎
(四十肩、五十肩) - 凍結肩(frozen shoulder)
・拘縮肩 - 頚肩腕症候群・肩こり
- ギックリ腰(急性腰痛症)
- 腰椎椎間板ヘルニア
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- 変形性膝関節症
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