骨粗しょう症とは、骨量の減少(骨密度低下)、骨質の悪化により骨の強度が低下し、骨折しやすい状態もしくは骨折した状態のことを言います。
骨の強度は70%が骨密度、30%が骨質で規定されるといわれています。
骨も他組織と同様に新陳代謝が行われているため、古い骨は新しい骨に常に置き換わっています。
実際には、破骨細胞という骨を溶解する細胞が古い骨を吸収し、骨芽細胞という骨を造る細胞が新たな骨を作り出すというサイクルが絶えず繰り返され、骨吸収と骨形成とのバランスをとることによって、骨は強度と形状を維持しています。(骨のリモデリング)
骨粗しょう症の患者さまでは、骨吸収が骨形成を上回り、結果として骨の強度低下が起こっていることが多いです。
骨強度低下がある骨粗しょう症の患者さまでは、骨折の予防が非常に重要です。
症状
骨粗しょう症そのものに痛みはありませんが、尻もちをついたり、つまずいて手をついたり、くしゃみをするなどのわずかな衝撃で骨折してしまう事があります。(脆弱性骨折)
脊椎に微小な骨折が起こることで腰背部に漠然とした疼痛が出ることもあるようです。
脆弱性骨折の代表的な部位として、脊椎、上腕骨近位部、大腿骨近位部、手関節があります。
胸腰椎、大腿骨近位部に骨折が生じると、日常生活動作、介護度だけでなく、生命予後にも影響します。
また、次の骨折が生じる可能性が数倍にも増えることが知られており、これらの骨折発症を予防することが非常に大切です。
骨粗しょう症は骨だけの問題ではなく、命にも関わる病態です。
特に高齢者で骨粗しょう症による大腿骨近位部骨折を起こした場合の生命予後は、がんにかかった患者さんと同様という報告もあります。
骨粗しょう症治療で、骨折頻度を減少させるだけではなく、心血管イベントの減少、脂質代謝の改善、ひいては生命予後の改善まで期待できるとの報告があり、骨だけの問題ではありません。
原因
特に閉経後の女性に骨粗しょう症は多くみられます。
加齢、閉経に伴う女性ホルモンの減少が影響しやすいことがわかっています。
男性であっても加齢により骨密度、骨強度は低下する傾向があることがわかっています。
また、高齢ではないからといって安心はできません。
骨密度は20歳代でピークを迎えますが、この最大骨量(peak bone mass)が低い方は閉経前の比較的若年であっても骨粗しょう症、骨量減少を来している可能性があります。
古い骨の分解が進み(骨吸収の亢進)、新しい骨があまり作られない(骨形成が不十分)状況となると、結果として骨密度が低下し、骨の中がスカスカになってしまいます。
また、骨の強度の70%は骨密度、30%は骨質で規定されるといわれています。
骨質が低下しやすい病態(糖尿病、慢性呼吸器疾患、腎不全、喫煙、ステロイドの使用など)があると骨密度はそれほど減っていないのに骨強度が低下し骨折しやすい状態になることもあります。
検査・診断
胸腰椎レントゲン
椎体骨折があっても自覚症状のないいつのまにか骨折などもありえます。
椎体高の減少などをチェックします。
DEXA(骨密度チェック)
骨粗しょう症の診断、治療効果判定には、腰椎及び大腿骨近位部の骨密度を評価することが推奨されています。
腰椎は海綿骨の骨密度、大腿骨近位部は皮質骨の骨密度を主に反映しています。
20代の人と比較した現在の骨密度(成人若年比:YAM(young adult mean)で70%未満の方は骨粗しょう症、80%未満の方は骨量減少と診断されます。
前腕、踵での骨密度チェック(レントゲン、超音波による検査)は簡便でありスクリーニングとしては有用ですが、当院ではDEXAでのチェックをお勧めしています。
血液、尿検査
骨粗しょう症は全身の問題であり、骨吸収、骨形成のバランス、ビタミンD、カルシウム濃度、腎機能のチェックなどが必要です。
治療介入前に検査を行い、治療方針を決定し、治療介入後も定期的にチェックを行うことで治療効果の判定にも使用します。
治療
骨粗しょう症の治療は、骨密度の低下を抑え、骨折を防ぐことを目的とします。
投薬による治療だけでなく、食生活の見直し、運動習慣の改善の指導なども並行して行っていきます。
治療薬
骨吸収抑制剤、骨形成促進剤、SERM(エストロゲン作用薬)、骨の栄養に関与する各種ビタミン剤(ビタミンD、K)、カルシウム製剤などがありますが、どんな薬剤を選択し、いつから治療を開始するかは患者さまの年齢、基礎疾患、骨粗しょう症の程度、血液検査結果などを複合的に考慮して判断します。
生活指導、運動療法
骨に適度な負担をかける運動がお勧めです。
踵落とし運動、階段、散歩など、年齢、状態に応じて適度な運動を継続することが大切です。
食事指導
バランスの良い食事、タンパク質、ビタミンD、ビタミンK、カルシウムの十分な摂取が重要です。
- ビタミンD:鮭、干し椎茸、キクラゲなどに多く含まれます。
- ビタミンK:緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜など)、納豆などに多く含まれます。
当院での治療の目標
- 骨粗鬆症検査を積極的に行い、早期に骨粗しょう症の治療を開始する
- 骨折が既に起こっている場合は再発を防止する
- 骨強度、骨質の維持、改善
- 日常生活の自立を維持し、健康寿命を伸ばす
骨粗しょう症の診断、治療開始、治療継続
骨密度、骨粗しょう症の心配があれば、まずDEXAにて骨密度を測定し、骨粗しょう症、基礎疾患によっては骨量減少があれば、血液検査で骨代謝マーカー、Ca、ビタミンD濃度などをチェックしましょう。
その結果を参考に薬剤、食事療法、運動療法、それぞれを組み合わせて治療介入致します。
結果によっては、数年後に再度DEXAを取ることで経過観察させていただきます。
治療開始後は定期的(6ヶ月程度)にDEXA、血液検査を行い、骨密度の増減、血液検査で骨代謝マーカー、Caの変動をモニターし、治療効果の判定、投薬内容の見直しを行います。
骨折リスクが高いといわれている病態
- 50歳以上の女性(特に閉経後)
- 痩せすぎ、太り過ぎ
- 両親に大腿骨近位部骨折歴がある
- 喫煙
- ステロイド薬の使用、使用歴
- 膠原病の既往(関節リウマチなど)
- 嗜好品を大量に飲まれる方(アルコール、カフェイン)
- 糖尿病、慢性腎不全、慢性呼吸器疾患
- 過激な食事制限によるダイエットを行ったことのある方
- ホルモン療法、放射線療法などの治療歴のある方
骨質について
骨強度の70%は骨密度、30%は骨質で規定されるといわれています。
骨質は骨の微細構造や骨の代謝状態が影響しています。
骨を構成するコラーゲンは正常であればしっかりした善玉架橋でつながっていますが、これが悪玉架橋に置き換わると、骨質の劣化が起こり、骨密度が高くても骨折しやすい状況となります。
骨質が悪くなる原因には糖尿病、慢性呼吸器疾患、腎不全、喫煙、ステロイドの使用などがあり、これらがある場合には骨密度がそれほど低くなくても治療をお勧めする場合があります。
現段階で、骨質をチェックする方法は研究室レベルではありますが、臨床レベルではありません。
今後の発展に期待が持たれている分野となります。
骨粗しょう症治療中の抜歯について
骨吸収抑制剤の使用に関しては顎骨壊死のリスクがあり、注意喚起がなされています。
罹患する確率は数万人に数人程度と言われ極めて低い頻度です。
一方で、癌の骨転移に高容量の骨吸収抑制剤を使用した場合には、数百人に数人程度が顎骨壊死に罹患すると報告され、注意が必要です。
抜歯前の骨吸収抑制剤の休薬に関して、2016年改訂のポジションペーパーでは4年以上骨吸収抑制剤を使用した患者さんは抜歯の前後2、3ヶ月の休薬を医科-歯科間で協議すると記載されていますが、休薬の効果については疑問が多く、基本的には休薬は不要と考えられる傾向にあります。
しかし、顎骨壊死が起こると難治性でもあり、発症すると元の状態に回復することが困難なため、骨吸収抑制剤による治療を漫然と長期間継続しない(5年以内に休薬や変更を考慮)こと、定期的に歯科受診して歯科クリーニングなど積極的に口腔ケアをすることで顎骨壊死の発症リスクを下げることができる可能性が高いため定期的な歯科受診していただくことをお勧めします。
当院では歯科との連携を積極的に行っていきたいと思っております。
骨粗しょう症の予防
骨密度は20歳代でピークを迎えますが、この最大骨量(peak bone mass)が低い方は閉経前の比較的若年であっても骨粗しょう症、骨量減少を来している可能性があります。
20歳以前に栄養をしっかり摂り、適切な運動を行うことがpeak bone massを上げるのに大切です。
ビタミンD、ビタミンK、カルシウムを十分に取って丈夫な骨を作り、たんぱく質もしっかり摂りましょう。
適度な運動、日光を浴びることも骨にはいいことです。
また、喫煙やアルコールは骨に悪影響を及ぼすため、控えるようにしていきましょう。
女性の場合、過度な運動、エネルギー不足から生理不順が起こり、骨量増加に支障をきたす場合もあります。
マラソンランナー、バレリーナなど審美系競技者に多い傾向があります。
生理不順が起こっている場合には婦人科などでの相談、栄養状態の改善指導を提案させていただく場合もあります。
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