中野区新中野の整形外科 リハビリテーション科 新中野整形・リハビリテーションクリニック 中野富士見町

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腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは

脊柱管とは、脳から連続する脊髄が通るトンネルです。

脊柱管は、脊椎椎体・椎間板、後縦靭帯、黄色靭帯、椎間関節などで構成され、脊柱管内を通る脊髄の周囲には脳脊髄液が存在し、脊髄の栄養、保護に役立っています。

脳から末梢にむけて脊髄は頚髄、胸髄、腰髄、仙髄と連続し、それぞれの部位で神経根を出しながら下降し、第2腰椎レベルからは馬尾神経を形成することが多いです。

腰部脊柱管狭窄症は、腰部の脊柱管が狭くなることで、神経(脊髄、馬尾、神経根)が圧迫され、血行障害が起こり、症状を引き起こす病気です。

好発部位は下位腰椎(L4/5 > L3/4)で発症頻度は60~70歳頃から増加してきます。

原因

脊柱管が狭くなり、神経(脊髄、馬尾、神経根)が圧迫され、血行障害が起こり、神経の浮腫・変性が起こることが原因ですが、その病態は様々で、完全には解明されていません。

加齢による脊柱管構成組織の変性が影響

  • 椎間板の膨隆:椎体の変性、骨棘による前方からの病変による脊柱管狭窄
  • 黄色靭帯の肥厚:椎間関節の肥厚による後方からの病変による脊柱管狭窄

腰部への負担が影響

長時間の自動車運転、仕事などによる負担が影響します。

生まれつき脊柱管が狭いことが影響

生まれつき脊柱管が狭い場合、要因の一つとなります。

腰部脊柱管狭窄症を引き起こす腰椎疾患

  • 腰椎すべり症(前方すべり、側方すべり)
  • 変形性腰椎症による側弯変形
  • 靭帯骨化症
    後縦靭帯骨化症は頚椎に多く、黄色縦靭帯骨化症は胸椎に多い傾向があります。
  • 椎間不安定性
  • 機械的負荷のかかる環境
    手術固定椎の隣接椎間、生理的均衡の崩れた腰椎などは負荷がかかります。
  • 腰椎椎間孔狭窄症
    椎間孔は神経根が通る部位で、腰椎椎間孔狭窄症も腰部脊柱管狭窄症に含まれます。

症状

腰部神経(脊髄、馬尾、神経根)は下肢の運動・知覚、膀胱・直腸などをコントロールしているため、腰部脊柱管狭窄症で神経が圧迫され、血流障害が起こると以下の症状が出ることがあります。

  • 腰痛、下肢痛、下肢のしびれ(腰椎椎間板ヘルニアほどは強くないことが多いようです。)
  • 下肢の運動障害、知覚障害
  • 膀胱直腸障害、肛門周囲のしびれ

障害部位による分類

馬尾型(14%)

主に脊柱管中心部の狭窄により馬尾が圧迫されるタイプです。

下肢の痛みはなく両下肢のしびれ、だるさ、ふらつき、膀胱直腸障害が出やすいです。

神経根型(70%)

主に脊柱管外側の狭窄により神経根が圧迫されるタイプです。

下肢痛が出やすいです。

混合型(16%)

馬尾型と神経根型の両方が混在したタイプで双方の症状が出ます。

腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状

間欠性跛行

歩行時に下肢痛や下肢のしびれが増悪し、休憩したくなり、座って背中を丸めると楽になりまた歩行できるというのが典型的な症状です。

狭窄症の症状は馬尾や神経根の血流障害で生じるため、痛みや痺れは脊柱管が広くなる前傾姿勢では軽減し、脊柱管が狭くなる立位や伸展姿勢で増強します。

つまり、自転車やシルバーカー歩行では症状が出にくく、姿勢因子があります。

このような現象が起こる理由は、直立姿勢、腰部の伸展時には脊柱管後方の黄色靭帯が分厚くなることで脊柱管が狭くなり、前屈(屈曲)すると逆に脊柱管が広がることで引き起こされています。

腰部脊柱管狭窄症の症状が進行すると、仰臥位での睡眠でも下肢がしびれ、横向きで背中を丸めないと眠れないこともあります。

神経痛(大腿神経、坐骨神経)

  • 大腿神経:L2~L4から構成され、障害を受けると膝内側あたりの症状が出ます
  • 坐骨神経:L4~S3から構成され、障害を受けると殿部から下肢外側、足底症状が出ます

重篤な脊椎疾患(腫瘍、炎症、骨折等)の合併症を
疑うべき red flags(危険信号)

以下の危険信号がある場合には特に注意が必要です。

  • 発症が20歳未満、または55歳以上
  • 時間や活動性に関係のない腰痛
  • 胸部痛
  • がん、ステロイド治療、HIV感染の既往
  • 栄養不良
  • 体重減少
  • 広範囲に及ぶ神経症状
  • 構築性脊柱変形(円背 など)
  • 発熱

診断

問診

歩行状態(間欠性跛行)、痛みやしびれの性質、部位、膀胱直腸障害の有無を確認します。

身体所見

症状の誘発肢位の確認(屈曲、伸展)、SLR test(坐骨神経)、FNST test(大腿神経)を確認します。

神経学的チェック(筋力、知覚、しびれ、反射)を行うことで症状をひき起こしている原因部位と程度を推測します。

画像所見

腰椎すべり症、変性側弯、椎間不安定性、手術歴の有無などのチェックに必要です。

単純レントゲン、CT、MRI、必要であれば脊髄造影検査も行います。

単純レントゲンのみでもある程度は病態を推測できますが、より詳しく診断するためにCT、MRIが必要となることが多いです。

MRIでは、椎間板、黄色靭帯などの軟部組織の状況が詳細にわかります。

脊髄造影による検査は、MRIの精度が上がり、行う頻度は減少しています。

腰椎の屈曲、伸展などの動態撮影が必要な際には有用と考えられます。

責任病巣を確認する目的と治療的な意味を合わせて神経根造影、ブロック注射も行うことがあります。(術前に手術で除圧すべき部位などを確認、決定するためには重要です。)

治療

保存的治療

投薬

痛みに対しては、消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン、弱オピオイド、神経痛に効果が期待できる薬などを使用して痛みを和らげます。

使用する薬剤によっては、導入時に眠気、ふらつきなどの副作用が出ることもあり、注意しながら使用する必要があります。

血流障害、しびれには、プロスタグランジン製剤、ビタミンB12なども使用します。

装具療法、物理療法(牽引、マッサージ、電気・温熱治療)

急性期にはコルセットなどの装具を使用することで腰部の安静を保ちます。

腰部のマッサージ、電気・温熱治療で腰部の筋緊張を緩和し、腰椎牽引を行うことで、椎間板にかかる負担を減らすことも症状緩和には有用と考えます。

リハビリテーション(運動療法)

適切な日常生活動作方法の獲得、姿勢調整などで症状の緩和、増悪防止が可能です。

より積極的に行い、下記により腰部の負担を軽減し、症状の緩和、再発予防を目指します。

  • 腰部、大腿のストレッチを行うことで骨盤、股関節利用を促す。
  • 腹横筋、腹斜筋群を賦活化する腹圧・体幹トレーニングを行うことで体内のコルセット的な役割を強化し、腹圧をかけた状態で運動を行えるようにする。
  • 脊柱管拡大エクササイズを行う。

リハビリテーションの詳細はこちらから

ブロック治療
  • 神経根ブロック
    症状から圧迫されている神経根が予想できる場合、エコー、レントゲンガイド下に注射を行うこともあります。(手術前の除圧部位決定にも使用されます。)
  • 硬膜外ブロック
    神経を包む硬膜の外側に「局所麻酔薬」や「ステロイド薬」を注射します。

外科的治療

保存的治療に抵抗性であったり、歩行困難な場合には、手術が必要になる場合もあります。

積極的に手術をお勧めするケース
  • 下肢の運動麻痺が進行性の場合、耐えられないほどの疼痛がある場合
    後遺症として麻痺が残存しないように早期に手術などでの治療が必要となります。
  • 膀胱直腸障害がある場合
    脊柱管狭窄が高度な場合、両下肢症状とともに排便、排尿障害、便意、尿意がわからない、失禁してしまうなどの症状が出ることがあります。自律神経障害の残存する可能性もあり積極的に手術する必要があります。

上記の場合は、脊椎専門医の在籍する専門病院への受診をお勧めします。

たとえ高齢者であっても、心肺機能、膝関節・股関節などの問題も合併しておらず、脊柱管狭窄が原因で生活に支障が生じている場合には積極的に手術をお勧めする場合があります。

運動器障害から移動能力が低下している状態をロコモティブシンドロームと呼びますが、手術をすることでロコモ症状の悪化防止、改善が期待できるためです。

一方で、全身の合併症、重症の変形性関節症などが合併しているケースでは、腰部を治療しても歩行能力の改善が見込めないこともあり、手術すべきかどうかはしっかり検討する必要があるケースもあります。

担当医師としっかり相談して治療方針を決定しましょう。

手術方法
  • 除圧
    脊柱管を狭くしている骨、靭帯、椎間板を処置して脊柱管を拡大する方法です。
  • 固定
    脊椎に不安定性がある場合や大きなズレがある場合に行います。椎体間固定、後方でのスクリュー、ロッドを使用した固定など、その方法は様々です。

直視下での手術の他、内視鏡を使った低侵襲手術も行われています。

どのような手術になるかは症状にもよりますので担当医に確認しましょう。

手術の後の注意点

手術後にしびれが残存するケースは結構あります。

理解が必要な場合もあります。

予防

  • 日常生活で姿勢を正しく保つことが必要です。
  • 神経圧迫は腰をまっすぐ伸ばして立つと強くなり、前屈すると和らぎますので、歩行時に杖を使用したり、シルバーカーを押して腰を少しかがめるようにしましょう。歩行が楽になります。また、自転車運転も痛みが起こりにくいため良い運動になります。
  • 通常、歩行することは筋力強化に役立つため推奨されますが、腰部脊柱管狭窄症の場合には症状を悪化させる可能性があり、注意が必要です。

よくある質問

腰部脊柱管狭窄症の自然経過は?

重症患者さんは、当初から手術が提案されるため保存的治療の効果は不明です。

中等度症状までの患者さんのうち約30%は自然に症状が軽快すると考えられています。

運動麻痺がなく、日常生活に支障がない場合は、間欠性跛行があっても即座に手術ではなく保存的治療でしばらく経過観察することをお勧めすることが多いです。

ただし、保存的治療で経過観察中に急激に症状が悪化することがあります。(約30%)

急激に殿部・下肢痛が出て、運動機能低下がおこった場合、狭窄症以外の病気(腰椎椎間板ヘルニア、圧迫骨折、腰部の嚢胞、脊柱管内での出血などの合併)が起こっている可能性が高く注意が必要です。

MRIなどで精査が必要となることが多いです。

手術と保存的治療はどっちがいいのか?

症状にもよるためはっきりしたことは言えませんが、4年以内の経過では、下肢痛、腰痛ともに手術の方が優るとされています。

10年くらいの長期成績では、下肢痛は手術が優るものの、腰痛はほぼ差がないという結果のようです。

これは加齢による変性が影響していると考えられています。

腰椎椎間板ヘルニアとどう違うの?

病態が違います。

ただし、腰部脊柱管狭窄症に腰椎椎間板ヘルニアを合併する場合もあるため明確に分類するのが困難な場合もあります。

腰椎椎間板ヘルニアは椎間板が破れて中身が飛び出たもので、これが神経を圧迫します。

髄核が椎間板から脱出しようとする内圧により椎間板の後方線維輪や後縦靭帯を刺激したり、脱出したヘルニアが神経根に接触して炎症を起こしたり機械的に圧迫するために痛みが生じます。

急性発症で激痛になるのは腰椎椎間板ヘルニアが多く、若年性での発症が多いです。

腰椎椎間板ヘルニアでは腰痛、下肢痛が起こりますが、間欠性跛行はありません。

また、椎間板内圧が上がる前屈、座位で症状が増悪しますが、腰部脊柱管狭窄症では逆にこのような姿勢では症状が軽快しやすいです。

腰部脊柱管狭窄症以外に間欠性跛行を引き起こす疾患はある?

間欠性跛行がある場合、その原因疾患には腰部脊柱管狭窄症以外に末梢動脈疾患(PAD)があります。

閉塞性動脈硬化症(ASO)が代表疾患です。

(腰部脊柱管狭窄症:75.9%、末梢動脈疾患:13.3%、合併型:10.8%と報告されています。)

どちらも間欠性跛行が出現しますが、末梢動脈疾患は立ち止まるだけで症状が緩和するのに対して、腰部脊柱管狭窄症は座って背中を丸め、前屈したくなるという特徴があります。

その理由は、下記の通りです。

  • 末梢動脈疾患は歩行中の活動筋の酸素供給と代謝のミスマッチで間欠性跛行が出現し、立ち止まることで活動筋の酸素需要が減るため症状が緩和する。
  • 腰部脊柱管狭窄症は神経症状として間欠性跛行が出現し、前屈することで脊柱管が拡大するために症状が緩和する。

末梢動脈疾患の診断は?

足関節上腕血圧比(ABI)は、「ABI=下肢血圧/上肢血圧」に当てはめて計算します。

通常であれば、下肢血圧>上肢血圧のため、ABIは1.0以上となります。

ABIが0.9以下では末梢動脈疾患を疑います。

その他、下肢の冷感、動脈触知不全なども疑います。

当院でできること

  • 身体所見、レントゲンからの診断
  • 投薬、注射、補装具を使用した保存的治療
  • 専門スタッフによるリハビリテーション
  • 手術術後の回復リハビリテーション

診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。

当院でできないこと

当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。

必要であれば専門外来に紹介させていただきます。

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