頚椎は7椎体で構成され、緩やかに前方凸にカーブしています。(生理的前弯)
頚椎にはなぜ前方凸の前弯構造があるのでしょう?
橋のアーチ構造が安定性や衝撃緩和に役立っているのと同様で頚椎の前弯構造も頚椎、頭部へのダメージを緩和、吸収するためにあるのかもしれません。
頭部は体重の1/10程度(平均5kg)と比較的重たいのですが、このカーブがあることで身体の真上にバランス良く位置することができ、頚部や肩周囲の筋肉は最小限の力でこの重たい頭部を支え、保持しています。
この「バランス良く」という点が大切で、バランスが崩れた場合、頚部や肩周囲の筋肉に大きな負担がかかることになります。
ストレートネックとは?
ストレートネックは病名ではなく、文字通り、頚椎の生理的な前弯が減少してアライメントが真っ直ぐになっている状態です。
パソコン、タブレット、スマホなどが普及してきたことも頚椎アライメントに影響しており、現代病の1つと考えられており、スマホ首と呼ばれることがあります。
慢性的な頭痛、肩こり症状に関与しています。
頭頚部前方位姿勢(FHP: forwar head posture)と呼ばれることもあります。
原因
頭部と脊椎アライメント(側方からみた際)
頚椎は前弯、胸椎は後弯、腰椎は前弯し、全体として緩やかなS字カーブを描いています。
この緩やかなカーブのおかげで、最上部の頭部を安定的に保持することができ、身体を上下に動かす際の脊椎にかかる負担(頭部からの圧縮ストレス)を衝撃緩和しています。
頭部の位置
パソコン、タブレット、スマホを操作する際、画面を覗き込む姿勢をとることが多いです。
このような覗き込む姿勢では、頚椎前方の筋肉が短縮、後方の筋肉が伸張する形となり、頚椎の生理的前弯が崩れやすい状態になります。
姿勢(胸椎の後弯、肩の前方突出、骨盤後傾)
胸椎後弯・肩の前方突出(背中が丸まっている猫背)、骨盤の後傾(椅子に浅く座り、背もたれを使用する)姿勢だと、身体は、重心・バランスを保持するために重たい頭部を前方に移動することで対処します。
このような姿勢が長時間継続すると次第に頚椎のアライメントが悪化し、ストレートネックにつながります。
筋肉の緊張によるストレートネック
パソコン、スマホなどで猫背姿勢を長時間しているうちに筋肉の緊張が高まり起こります。
長期化すると椎間板に負担がかかり、頚椎の変形につながることも多いです。
僧帽筋上部線維の過剰な筋活動が頚部の易疲労性と関係があるという報告もあります。
頚椎の変形性変化によるストレートネック
頚椎の変形性変化に起因して起こります。
頚椎椎間板ヘルニアなども関与します。
症状
全身症状
頭痛、眼精疲労、消化器症状(吐き気など)、自律神経症状から全身の倦怠感、疲れが取れにくい、めまい、耳鳴りなどの症状が出ることがあります。
頚部症状
頚部周囲の筋肉の緊張から筋肉が硬くなりやすく、それに伴い滑走不全、血行不良も起こるため頚椎の可動域制限や慢性的な首こり、肩こり症状(痛み、だるさ)が起こりやすいです。
僧帽筋、肩甲挙筋、斜角筋などに負担がかかり慢性的な肩こりになります。
頚椎のアライメント変化により頚椎神経根の障害が起こることで腕や手の痺れが起こることもあります。(頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症様の症状)
なんだか頭頚部が重たい感じがする場合には注意が必要かもしれませんね。
診断
問診、視診
作業時に適切な姿勢を保持し、無理な姿勢になっていないかなどをチェックします。
座位、立位などの姿勢、体表上からのアライメントをチェックします。
身体所見
頚椎疾患に準じた身体所見をチェックします。(疼痛、可動域、筋力、知覚、しびれなど)
肩関節の可動域を確認し、外転時の後頚部クリック(滑走不全)をチェックします。
レントゲン
頚椎の変形性変化、椎間板高の減少などをチェックし、全体のアライメントを確認します。
エコー
必要であれば、筋肉の滑走性を見る目的で追加します。
治療
変形性頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、頚肩腕症候群などがあれば、まずそちらの治療を行います。
並行して生活指導、姿勢、作業環境の改善などを行うことが大切です。
保存的治療
投薬
消炎鎮痛薬、筋緊張緩和薬、外用薬を使用することで症状の緩和をはかります。
注射
筋膜リリース(ハイドロリリース)やトリガーポイント注射で筋肉間の滑走不全、痛みの緩和をはかります。
物理療法
電気温熱治療、圧力波、軽いマッサージなどで筋緊張の緩和、血行改善を促します。
リハビリテーション
生活指導、姿勢・作業環境の改善、ストレッチ、体操、徒手的に筋膜リリースなどを行うことで症状の緩和を目指します。
正しい姿勢、脊柱アライメントを理解、獲得し、維持することが大切です。
正しい立位、座位を脊柱のアライメント、骨盤の傾きなどに注意しながら獲得しましょう。
枕の調整
枕の素材、高さ、幅などいろいろな点を調整してみる価値はありそうです。
予防
ストレートネックは急激に起こるものではなく、長期間の生活習慣や姿勢によって起こることが多いです。
そのため、頚椎アライメント不良を即座に戻すことは困難です。
症状の改善、予防から開始していくことが大切です。
脊柱アライメントのセルフチェック方法
壁を背にして、踵、臀部、肩甲骨部、後頭部を壁につけてみましょう。
これが正しい姿勢です。
自分が思っている正しい姿勢よりも頭部が後ろにあると感じる方が多いと思います。
日頃から気をつけた方がいい動作
スマホ、タブレット、ラップトップPC操作時の注意点
今や生活に欠かせないパソコン、タブレット、スマホなどは便利で、魅力的なコンテンツも多いので時間経過に気づかずに長時間操作してしまいがちです。
ついつい画面を覗き込んだり、背中を丸めていたり、頭部を前方突出して操作していませんか?注意が必要です。
ホルダーを使用したり、スマホ、タブレットの高さを顔の位置まで上げたりすることで、頚椎が長時間屈曲していないように気をつけましょう。
ラップトップPCを長時間使用する人は頚椎が前屈する形になりやすいです。
外部モニターを使用したり、椅子の高さを調整してみることで頚椎アライメントを含めた姿勢を見直してみることをお勧めします。
ストレッチ、肩甲骨周囲の運動のお勧め
肩甲骨が外転傾向にある人(猫背で肩の前方突出のある人・巻き肩)では肩甲帯エクササイズを行うようにしたりしましょう。
姿勢を正して、肩甲骨を寄せたり、離したりしてみましょう。
またデスクワークの場合は1、2時間に1回は立ち上がって軽く運動するようにしましょう。
参考:肩に小学3年生を乗せてスマホ操作する?
頚部の屈曲(前屈)角度次第で、頚椎には小学生が乗るくらいの負荷がかかっています。
- 前屈0°では4.5~5.5 kgの負荷が頚椎にはかかる(頭部が5kgとすると1倍)
- 前屈15°では12 kgの負荷が頚椎にはかかる(頭部の約2倍)
- 前屈30°では18 kgの負荷が頚椎にはかかる(頭部の約3倍)
- 前屈45°では22 kgの負荷が頚椎にはかかる(頭部の約4倍)
- 前屈60°では27 kgの負荷が頚椎にはかかる(頭部の約5倍、小学校3年生の体重!)
当院でできること
- 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
- 投薬、注射などの保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
- 変形性頚椎症
- 頚椎椎間板ヘルニア
- ストレートネック(スマホ首)
- 頚椎捻挫(むち打ち損傷)、外傷性頚部症候群、寝違え
- 胸郭出口症候群
- 肘部管症候群
- テニス肘
- ゴルフ肘
- 野球肘
- 肘内障
- 肩腱板損傷・断裂
- 肩石灰沈着性腱板炎
- 肩関節周囲炎
(四十肩、五十肩) - 凍結肩(frozen shoulder)
・拘縮肩 - 頚肩腕症候群・肩こり
- ギックリ腰(急性腰痛症)
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 脊柱側弯症
- 胸腰椎圧迫骨折
- 腰椎分離症・分離すべり症
- ガングリオン
- ドケルバン病
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- 母指CM関節症
- 指変形性関節症(へバーデン結節、ブシャール結節)
- 手根管症候群
- ギオン管症候群(ギヨン管症候群、尺骨神経管症候群)
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- 膝靭帯損傷
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